様々な木のかたち

長田典之 

木々はみな種に特有の樹形をつくる。たとえば、ケヤキはほうきを逆さにしたような樹形になるし、ミズキなどは幹から横方向に枝を等間隔で張り出し、階段状になる。こうした特徴的な樹形を持つ種であれば、葉が落ちてしまっている冬でも容易に種名を判断できる。さて、どうしてこのような様々な樹形を持つ種がいるのだろうか?

植物が生きていくためには、十分な量の光、水、窒素やリンなどの栄養分が必要である。私たちの目にもとまりやすい様々な樹形は、これらのうち、とくに光を得るために発達したものである。木の下に立ってみるとわかるが、どの木でも樹冠の内側には枝がはりめぐらされ、それらの枝に支えられた葉は樹冠の外側だけに分布する。光は樹冠の外側にある葉にさえぎられ、内側は非常に暗い。このように、樹形は、その木の葉がうまく光を受けられるように工夫されたかたちなのである。ただし、ただ単にその場で光を受けていればいいというわけではない。小さい木(稚樹)は成長し、花をつけて種子をつくらなければ、意味がない。また、森林の中では周りの木の存在の有無によって、光環境には大きな差がある。このような光環境は、さらに時間とともに変わっていく。大きな木が倒れれば(ギャップが形成されると)明るくなるし、周りの大きな木が枝を伸ばせば暗くなる。


写真1.明治42年と彫られた樹皮.幹が太った結果,文字が横方向に広がっているのがわかる.

したがって、暗い林床にいる稚樹は、うまく光を受けつつ、成長していくことが必要になる。多くの種では、暗い林床ではほとんど成長せず、ギャップができて明るくなると急に成長することが知られている。しかし、周りの個体が成長することで暗くなる(ギャップが閉じてしまう)と、また成長できなくなってしまう。ブナ林のブナなどは種子から発芽してから林冠に達するまでに、何回もこうした光条件の変化を経験することがわかっている。いろいろな樹形を持つ種が存在するということは、種によって、うまく光を受けながら成長するための方法がそれだけ異なると言うことである。こうした観点から木々をみると、その精巧さに驚かされる。

さて、先日、福島県の会津駒ヶ岳に行く機会があった。登山道の途中にブナ林が広がっているのであるが、道沿いのブナの幹にたくさんの人が名前などを彫った跡が見られた。ここで驚いたのは、明治42年と記したものがあったのである。本当に当時彫ったものなのかはわからないのだが、もし本当だとすると、この木の幹は100年前でも文字が彫れるほどの太さがあったことになる。現在は樹高20m程度だと思われたが、この木も長い期間をかけて育ってきたのは確かであろう。こう考えると、彫った年月の印は貴重なものと思えてくる。もちろん幹に落書きをするのは良くないことなのだが。

(おさだのりゆき 日光分園研究生)